例のツイートの補足

なんか軽い気持ちでツイートしたやつ(↓これ)

がちょっとした誤解を伴って拡散されちゃったので補足を書こうと思います。

 

九工大の教授の新しい合成法って?

www.nishinippon.co.jp

これですね。現在主流であるハーバーボッシュ法というアンモニア合成法は高温・高圧が条件なので結構コストがかかったり環境負荷がかかったりするのですが、この記事によると電気による合成でコスト低減が見込めるそうです。すごーい!

 

誤解とは?

まずぼくの専門は農学であってアンモニア合成には(ほぼ)関係ありません。

「じゃあなんで卒論のイントロにアンモニア合成法が出てくるんだよ」ってなると思うんですけど、詳しいことは省きますが作物を育てるときの肥料を作るにはアンモニアが必要で、それを植物は窒素栄養として吸収するんですね。なので現在最もメジャーなアンモニア合成法であるハーバーボッシュ法の出現により作物の収穫量は飛躍的に向上しました。しかしながら、この方法は高温・高圧下でしか行えないので、肥料のほかの主成分に比べると、アンモニアの合成には多くのコストがかかります。つまり、意図したイントロとしては「現状のアンモニア合成法(ハーバーボッシュ法)は高温・高圧下で行われるから化石燃料とかが必要でコストがかかる上に環境にもあんまりよくない。だから肥料の使い過ぎはよくないよね。従ってぼくは窒素栄養を効率的に吸収できる作物について研究しようと思ったよ。で、ぼくの研究結果がこれだよ」というものです。

多分今拡散されてるツイートは「九工大の春山教授と競合した研究をしてて、先を越されてしまったので卒論がヤバい」という解釈をしてる人がほとんどだと思うんですけど、あれは「アンモニア合成法のコスト面とか環境負荷とかが研究の動機だったんだけど、新合成法が主流になったらぼくの研究動機薄れちゃわない?やばない?」ということです。わかりにくくてごめんなさい。

 

じゃあ卒論のイントロはこのままでいくの?

このままでいきます。「新合成法が工業レベルの実用化に成功したら前提崩れちゃうんじゃない?」って質問には↓こんな感じでこたえようと思っています。

②についてですが、貼った記事を読んでもらえばわかる通り、実験室段階での成功なので、工業レベルで成功させるにはまだコスト面とか安全面とかいろいろな問題を突破する必要があります。実現すれば喜ばしいのは間違いありません。

③についてですが、「アンモニア合成段階での化石燃料による環境負荷だけではなく、肥料の過剰使用による赤潮等の問題もあるから、やっぱり窒素栄養吸収の効率化には意味があるよね」ってことです。これで新合成法が実用化されてもぼくの研究は安心ですね(?)

 

この新合成法って結構怪しくない?

これは結構リプライとかで聞かれてるんですけど、ぶっちゃけ専門外なのでよくわからないです。ごめんなさい。詳しい方よろしくお願いします。個人的には、本当にコスト低減が可能で実用段階までいってくれるのなら、割とマジで世界が変わりそうなので楽しみだなあという感じです。

 

ちなみに先を越されてたら卒論ってヤバいの?

リプライでおっしゃっている方もいましたが、「学士レベルなら先行研究を明示してきちんと差分を示せば問題ない」と思われます。うちの教授は「卒論は成果ではなく過程を見るもの」と言っていました。

 

おわりに

心配してくれる方とか笑ってくれる方とか不憫に思ってくれる方とかいろんな方から様々な反応をいただきました。ありがとうございます。卒論は出せると思います。卒業はテストが大丈夫なら大丈夫です。あんなツイートからわざわざこんな長文を読んでいただきありがとうございました。