自粛と容姿

コロナウイルスが流行ってから、容姿に気を使うようになった。

 

元々ぼくは容姿に気を使う性質ではなく、大学ではイカトン御用達生協の床屋に通い、終いにはそこで坊主にするまでだったのだが、卒業から1年半、とうとう人並みの半分くらいには見た目を気にするようになった。

ファッションセンスは残念ながら以前のままだが、慢性的になりつつある肥満の解消のためフィットボクシングをダウンロードして20日ほど毎日プレイしているし、ヘアワックスをこの歳になって初めて購入した。さらには二の腕の湿疹(毛孔性角化症というらしい)を気にして軟膏まで買った。

「お前の見た目なんて普段から誰も気にしないのに、このご時世尚更気にしねえよ」と思うだろう。ぼくもそう思う。しかしただ一人、ぼくの姿を見る時間が飛躍的に増えた人間がいる。

そう、ぼくだ。

これはひたすらに孤独な大学生活を送ってきた経験による持論だが、他人との会話量と自分との対話量は反比例の関係にある。ただでさえ少ない職場でのコミュニケーションは、リモートワークの定着によってほとんどゼロになった。自らを見つめ直す時間は飛躍的に増加した。これが自意識の増大につながっていることは想像に難くない。

元々人の目など気にするような質ではない。しかし自身の視線に耐えることはできなかった。つくづく損な性格だと思う。

それからはネットでヘアワックスの使い方やダイエットの基本などについて調べるようになった。これまで全く触れてこなかった情報で、でも多分普通の人間は当然のように知っている情報だ。知らなかったことを知るのは楽しくて、もう5年くらい早く容姿を気にしていたら彼女のひとつもできていたんじゃないかなどと考えた。

「世の男性はこっちじゃなくてこっちのほうが好みだよ!」と言いながら、流行りのファッションと染めた髪に身を包んだ女性を否定し、いわゆる清楚系のファッションとナチュラルメイクを推奨する、というツイートを極稀に見かける。おそらくだが、そんなことは世の女性は熟知しているはずだ。

昔pixivで見かけた女性の婚活エッセイ漫画にあったエピソードで、「マッチングアプリで男性の気を惹くため、流行しているメイクではなくAV女優のメイクを真似したところ、面白いように釣れた」というものがあった。AV女優こそが最も男性にウケている女性だと考えたからそのようにした、だそうだ。

ではなぜ世の女性はそうしないか?それは普段から男ウケを考えているわけではないからだ。つまり目的が違う。これは昔ツイッターで見た情報だが、「メイクは自分のテンションを上げるためにやっている」そうだ。

ぼくの目的もおそらくこれに近い。容姿を整えるのは、人の目を気にしているからというよりも、究極的には自分のため、つまり自己実現欲求を満たすためだ。こう考えると自粛期間に自分の見た目を気にするようになったのはむしろ当然のことのように思える。

とは言っても知識がたりなさすぎて自分の理想像も全くわからない。ファッションに自信ニキがいたら初心者用に勉強になるサイトとか教えてほしいと思う。